ノートは放棄された。

宿主を離れる時が来た。



今まで俺を映していた瞳にはもう、俺は映らない。
記憶もない。何もかもが消え去った。



そう。次にノートを得ることが出来るまで。





死神界に戻って、林檎でも食べよう。

砂のように味気ない林檎を食べよう。

また退屈な時間が始まる。







‐0: the god of death is searching for the her.‐







死神界に戻るために羽を広げた。
…広げただけで留まった。



1つだけ、行きたいところがあったから。
大学だとか言うところで会った、少女のところへ。

名前を思い浮かべるだけでいい。
すぐに見つかった。飛んでいける。
距離もないから、すぐに着く。一瞬だ。





やっと、会える。

月抜きで、思う存分。



あぁ、ほら。元気に笑ってる。
優しい顔だ。見ているこっちが楽しくなるような。



あのときのままだ。
最後に月が学校に行った、俺が最後に見たときのままだ。





良かった。





「……?神様……?久しぶり。」


俺に気付いた。
見えない俺に微笑んだ。





嬉しい。





俺だけのための笑顔。





嬉しい。







………嬉しい、嬉しい、ウレシイ………




















俺も笑いかけて……………やっと気付いた。





どうして、俺を感じることが出来たのか。

存在に気付けたのか。

やっと気付いた。

見えるんだ。感じるんだ。





…なんで、今まで気付かなかったんだ、俺は。















俺の眼に映った名前。



彼女の名前。















その下に映る寿命は。















もう。















あと少ししか。










何で、出会ってしまったんだ。

何で、今更思い出したんだ。

何で、気付かなかったんだ。

何で、此処に来たかったんだ。





何で。何で。何で。何で。





その全てに、やっと気がついた。





と出会ったのは偶然で。

思い出したのは突然で。

気付かなかったのは必然で。

此処に来たかったのは当然だった。










あぁ、月。そんなに早く片つけるんじゃないぞ。
せめて、この時間だけは。
守れない、守りたいものを見つめる、この時間だけは。



偶然を、必然に変えたのは。
俺に芽生えた愛だから。





この時間の中で、愛について、俺なりに学ぼうと思う。







〜壊楽の虜〜







***あとがきという名の1人反省会***
丁度去年の今頃。
「背中合わせの体温。」というリュークの短編を書きました。
その短編の続編です。因みに連載。

個人的に書こうか迷ったんですが、
思いついてしまった以上は残しておこうと思って書いてみました。
今回はリューク1人語りです。
色々言いたいことはあるのですが(文章が稚拙だ!とか)、
取りあえず、サブタイトルの英語の意味だけ。
「死神は彼女を探している。」です。簡単な英語です。

今後ともどうぞご贔屓に。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

2005.10.7 水上 空