愕然とした。

驚いたところで、嫌だといったところで。

それは、変えようがない現実だと知っているから。

変えられるなんて、冗談でも口に出せるような。

そんな純粋なモノを、俺は持ち合わせていなかった。

多分、俺が死神として生まれてきてから。

ずっと。







‐1: a difficult decision‐







ふわりと微笑むの瞳に、俺は映っていない。
ノートに触れない限りは、俺の姿は見えない。
そういう、決まりだから。


「久しぶりに会えたね。………嬉しいな。」


微笑む瞳に、俺は映ってはいないのに。
どうしてはこんなに嬉しそうなのだろう。





俺が、死神だと知っても。
こんな風に、俺を受け入れてくれるのだろうか。





機嫌が良さそうに歩くに並んで飛んでいく。
時折微笑むは、俺を本当に感じている。
姿は見えないのに、存在自体が分かるんだ。
寄り添うように飛んでいる俺に、小さく語りかけている。







「淋しかったよ。」







「もう会えないかと思った。」







嬉しそうに頬を染めて語る。
その姿は俺の見たかった表情そのもののはずなのに。










………胸が詰まる。










多分さっきまではこんなことはなかったんだろう。
ただ単に、の笑顔に喜ぶだけ。

上に輝く寿命を見るまでは。



…ほんの少しだけ、お情け程度に残った寿命を、見るまでは。















は商店街に入ると、小さな花屋に寄った。


「神様との、再会記念に。」


青くて小さな花を選ぶと、店の中へ入っていく。
俺はそれを、静かに見守っていた。
なんとなく、嬉しそうなの傍に居れなかった。



俺の中を、他の買い物客が通り抜ける。

ふっと覗いたその客の寿命は、まだ長かった。



より、ずっと歳が上なのに。










どうして。

が、死ななければならない?










会計を済ませたが俺に近づくまで、ずっと考えていた。





答えは、どうしても見つからなかった。

………俺が、人だったら。分かることなのだろうか?





動かない俺に気付いたのか、は一度立ち止まり、振り返った。
慌てて追いかけると、満足そうにまた歩き出す。
その足取りには、不安は見えなかった。















家の前まで着くと、は一息ついて、また俺に話し出した。


「今日は、帰ったりしなくて良いの?」


聞かれた言葉に、頭を撫でて返事をしてみた。
………たぶん、なら、気付くだろう。
そう、核心を持って。





案の定、は気付いたらしい。


「ありがとう。」


今日見た中で一番の笑顔を俺によこした。
そのまま、家の中に入っていく。
扉を閉めるとき、手をヒラヒラと振っていった。







部屋に明かりが灯るのを確認して、その場を離れた。
月が昇った空を、グングンと昇っていく。
我武者羅に。ただ、昇っていく。





{……………クソッ……………!}





ビュンと、無理やりな方向転換をして、今度は急降下。
今までとは違う、感じたことのない動揺に、嫌気がさした。
急降下と急浮上を繰り返す。
…ただ、行く当てもなく。
どうしようもない思いをそのまま映し出すかのように。





{……………どうしたら、良い……………?}





考えても、答えは見つからなかった。





{………今更、変えられないのに………。}





ちゃんと理解しているのに。















どうしようもなく足掻きたくて。
助けたくて。笑顔で居て欲しくて。
考える度に、自分の無力を呪いたくなる。










方法は知っているのに。










出来ないとも、知っている。










…どうすれば良い?










俺か、彼女か。

どちらかを選ばなければならない。















その晩、死神は。
ない頭から必死で知恵を搾り出し。





…1つの答えを出した。







***あとがきという名の1人反省会***
連載といいながら、かなり間が空いてますね。
この作品ではお久しぶりです。リューク連載です。
とりあえずサブタイトルから。
今回は「重要な決断」です。何か短いね。
英語苦手だから仕方ないんですよ。大目に見てください(笑

リュークと主人公さんはちゃんと意思の疎通が出来てるんですね。
私が1番驚いてます。どうしよう(汗
会話らしい会話がないのが悩みの種です。
読みにくいし。

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。
のんびり更新ですが、宜しければ今後もお付き合いください。

2005.11.15 水上 空