今週末の日曜日は、彼女の誕生日!


勿論、その日はちゃんとデートの約束もある。
最高の誕生日にしてあげたいな。



でも、まだプレゼントが決まんないんだ。
俺、…女の子の好みとか分かんないし。

男子高校って、こういう時に困るんだよねー…。

頑張ろう、楽しませてあげようって、気合だけが空回ってる感じ。
は、何が嬉しいのかな…?







〜ラッピング上等ッ!〜







「あー…どうしよ…。」


放課後の教室で、俺、武田啓太はカタログと格闘していた。
の…彼女の誕生日が間近に迫っているのに、プレゼントは未だに決まっていなかった。
もう誕生日までは1週間も残っていない。


カタログには女の子が好きそうなものが沢山掲載されている。
………のに、にプレゼント!となると、何が良いのか全く分からなかった。





あーもー!どうしよう!?
どうしたらいいかなぁ!?





「「「「まーだ決まんねーのかよ?」」」」

「……茶化すならどっか行っててー…。」


これでもかって言うほど悩んでいたら、肩口をいつもの4人に叩かれた。
…でも、答えている時間も今は惜しい。
ペラペラとページを捲りながら、顔も上げずに返事する。


「まぁッ!隼人さん、タケちゃんが冷たいわ!?」

「しゃーねーって。ちゃんの誕生日だもんなー?」

「つっても、1ヵ月前からずっとコレだし。」

「そろそろ決めねーと間に合わねーって。」





だああぁぁ!俺何か悪い事した!?
俺の上で騒がないでよ!
しかも見てたカタログ取り上げるって酷いじゃん?





「じゃー、隼人たちは何が良いと思うんだよ?」





取り上げられたカタログを取り返しながら聞いてみた。
半分は、八つ当たりなんだけどね。
真剣なのに茶化してくる方が悪いよねッ!





「縫いぐるみ?」

「…の部屋、シンプルだし。縫いぐるみ要らない。」



日向、残念賞。
の好みを分かってないね!
いや、寧ろ分かるな!俺が悔しいから!



「じゃ、ゲームとか?」

「…それは自分が欲しいだけっしょ?」



隼人、撃沈。
今欲しいゲームあったのにー!とか叫んでる。
…隼人さ、真剣に考える気ねぇだろ?(黒笑



「やっぱリッチ&ゴージャスなデートプラン!」

「…金ないよ。」



それは惜しいよ、つっちー。
金があったらマジやってみたい。
でも、どうせなら婚約とかの時にやってあげたいんだー。



「アクセサリーとかいいんじゃね?」

「いまいち好み分かんなくて…。」



竜〜……それそれ。
俺もそういうのが良いと思ったんだよー…。
身につけられるし。…でも、似合いそうなのと、好みって違うかもじゃん?





「あーもー…どうしよー……。」


皆が(一部真剣じゃなかったけど)考えてくれても、やっぱり事態は好転しなかった。
溜息を付きながら、もう1度カタログを見直す。
と、またしてもいきなりカタログを取り上げられた。
反射的に上を向くと、ニヤニヤと楽しげに笑った皆と目が合った。


そのままビシッという効果音と共に皆は俺に指を向ける。
4本の指がいきなり突きつけられて、俺は何も出来なかった。










「「「「じゃぁいっそお前をプレゼント!はい、決定!」」」」





「はぁ!?俺ぇ!?」





「「「「ついでに指輪も送っとけ!以上!」」」」










そのまま、言い逃げって感じで、4人は部屋を抜けていった。





……………俺、さ。そんなプレゼント、あげる自信ないんですけど……………?










ー。」

「何ー?タケちゃん。」


帰り道。はいつもと変わらず、俺のことを待っていてくれた。
先に帰った4人から、俺がまだ中に居るって聞いて待っていてくれたらしい。
…丁度良いので、それとなく聞いてみることにした。


「何か欲しいものある?」

「ん〜…?えーと…。無いよ?」

「えー…無いの?」

「うん。タケちゃん居るし。」


何か、スッパリと望みが絶たれた感じ。
ヤベー。どうしていいかわかんない。
ホントどうしよう。
…好みと別のもの買っていったりしたらどうなるんだ?





…多分、は笑って受け取ってくれる。優しいし。

でもきっと、すっごいがっかりして…。

んでもって、俺嫌われちゃったりして――――!!





「タケちゃーん?帰ってきてー?」

「えッ?あ、うん、大丈夫!」


脳内で最悪の想像まで行き着いたとき、が現実に引き戻してくれた。
すっごい心配した顔してくれてる。



………優しいなぁ………。



俺、どうしてもに喜んで貰いたいよ…。
優しいだからこそ。喜んで貰いたい。










を家まで送って、帰るとき。
俺の決意は固まった。


「…もう、腹くくるしかないよね…?」


つっても、強制的に固めたんだけどね。
軽く顔を叩いて気を引き締めると、大きな声で叫んだ。


「よっし…男☆武田啓太!頑張るぜー!」


まずは、と俺は商店街の方へと駆けて行く。










取りあえず、向かうのは文房具屋だ!!















日曜日。の誕生日、当日。

いつも学校へ行くときよりも早起きして、俺はプレゼントの用意をした。
…だって、このプレゼントはラッピングが命だし。
寧ろ、ラッピングこそ重要みたいな?
こういうとき、普段の器用さに感謝するよ。





ラッピング上等ッ!

の笑顔のために頑張れ、俺自身!





とにかく納得のいくまでラッピングを繰り返して、家を出た。
金色に映える青のリボンが、俺が走る度に揺れる。





喜んでくれるかな?
…受け取って貰えなかったらどうしよう?





そんなことばっかり考えてたら、の家への道を1本間違えてしまった。










「…ちゃーん、あ・そ・ぼー!」

「タケちゃん?早かったねー、ちょっと待ってて。」

「うんっ!」


インターホンを通して元気に会話。
元気な方が俺らしいし。いつもこうしてる。
…でも、今日はちょっと、声が上ずっちゃったし。





あー!緊張する!





「ごめん、お待たせー………?」


笑顔で迎えてくれたが急に固まった。
キョトンとした顔がマジ可愛い。
取りあえず、第1弾のビックリ企画は成功!らしい。


「タケ、ちゃん?」

「なぁにー?」

「どうしたの、その頭。」

「似合う?」

「うん、可愛いよ。」

「良かったーv」


ニコニコ笑いながら答えると、もつられて笑ってくれた。



実は。

俺の頭には、現在リボンがついてます!

因みに青色。

んでもって、青はの好きな色ナンバーワン!です。



は可愛いーって良いながら、俺の頭を撫でる。
今日の髪型はメッチャ気合入れたから。気に入ってもらえて嬉しい。
段差で逆転して、俺より高い位置にあるの顔がご機嫌に微笑む。





でも、ここから、もっと驚かせてやるんだよ?

、覚悟しとけ!

男☆武田啓太!こっからが本当の勝負だぜ!

を感動させちゃうぜ!びっくりドッキリ感動付きプレゼント大作戦(仮)」(タイトル激長!)

よー…いぃ。スタートッ!





「あのさっ?」

「うん?」

「俺さ、誕生日プレゼントメッチャ迷ったんだ?」

「うん。」

「そんで、隼人達はからかってくるし?は欲しいもの無いって言うし?」

「…???」

「1ヶ月迷ってコレかーとか、言われたくなくて。
でも、思いつかなかったからねー…思い切ってみたよ?」

「…?何、を?」

「最強プレゼントv」


まだキョトンとしてるの手をとって、一歩だけ前に引き寄せる。
ちょっと強引だったかもしれないけど、許して欲しいな。
…だってこれから言うのはちょっとでもの近くで言いたいし。
…それに、ちょっとでも男らしくしたいから。
段差で身長が逆転したまま言いたくないんだ。


1拍。
言葉が出てこなくて、息も吸えない位、緊張してる。
…大好きがこみ上げてくるよ。顔、熱い。
渇いていく口を、ゆっくり開けて。



こみ上げる想いと共に、に伝えたい。










「…俺を、全部あげる。」





ちゃんと笑って言えたか、自信ない。
触れてる指先から、心臓の音が聞こえそうだ。
手が震える。ヤバイ、マジで。
沈黙が、余計に恥ずかしい。





「俺が、プレゼントだよ。…イヤ?」





イヤ?
聞くのと同時に、の指に証をはめる。
同意を貰った訳でないから、そこに証を残していくことも出来ない。
顔熱いし、涙腺緩くなってるし。
…これ以上は待てなくて、一歩、開いた距離をもう一度詰める。


君との距離、あと、10センチちょっと。





「ずーっとずーっと、一緒だよ?」





今出来る、最高の笑顔で尋ねる。
は、やっとで言葉を返してくれた。
さっきはイッパイイッパイで、気付かなかったけど。

も顔が赤いね。緊張してくれたんだ。
…俺だけじゃなかった。





「………返せって………言われても、返さないからね…?」

「うん。ちゃんと、コレに誓えるよ?」





ゆっくりと確かめるように、指輪をなぞる。
絡ませていた指を解くと、は身を預けてきてくれた。
軽い体重が心地よい重みを伝えてくる。
顔が乗っている肩口。優しくの髪を梳く。
が泣いてるって何となく分かって、俺もちょっと泣いた。





「……後悔したって、遅いからね?」





顔を上げないままが聞く。
…そんな事、聞かなくても良いのに。ってちょっと思った。
髪を梳く手を休めて、ギュッと俺より細い身体を包み込む。





「好きだよ、ちゃん。後悔なんてするはずないっしょ?」

「…ありがとう…タケちゃん…」





お礼なんて言わなくていいよ。
だって、今日はの誕生日でしょ?

俺の方が、プレゼント貰っちゃった感じ。
あ、いや。俺をあげても、俺も貰った感じ?
だって、拒否されないってことはさぁ?





「ケーキもあるから、一緒に食べよ?」

「うん……!」





ニッコリ笑ってを見る。片手には、ケーキをちゃんと持って。
ホールなんて2人じゃ食べきれないから、ショートケーキだけどね。
頭をポンって叩いて、上を向かせる。
は、笑ってくれてた。
ちょっと目は赤かったけど、今まで見てきた中で、1番綺麗に笑ってた…ように見えた。
手を繋いで、の家に入っていく。





拒否されないってことはさぁ?

ずっと一緒に居ても良いって事でしょ?





、Happy Birthday !!










来年からも、ずっと俺が一緒だからね?







***あとがきという名の1人反省会***
えーと。もう弁解の余地もございません。
私はタケちゃんに何をさせたいんだか…orz
いや、多分「〜〜上等っ!」っていう言い方をさせたかっただけで…
どうなっちゃってこうなっちゃったんだろう。
下手にチューとかしなくても甘いのってあるなァと実感しました。
…多分目指してるのは可愛いヘタレです。

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

2005.10.16 水上 空