小さい頃。 テレビを見ながら、憧れた事。 その頃の私と同じくらいの子達が。 仮装をしながら、家々を渡り歩くお祭り。 〜お祭りと私と…。〜 「ー!」 黒銀学園校門前。 男子校の前で待つのも苦じゃないのは、待っている相手がタケちゃんだから。 大好きなタケちゃんを待つのは、寧ろ嬉しいんだけど。 約束の時間より少し早めに着いてみたら、そこで待ち受けるのは。 注目の嵐。注がれる視線が少し痛い。 じろじろ私を値踏みするように見る目。 それから守ってくれたのは、やっぱりタケちゃんだった。 いかにも急いできました、って感じのタケちゃんは両手を顔の前で合わせると同時に頭を下げた。 「ごめん、待った?」 「ううん、大丈夫だよ。」 多少の強がりもあったけど、笑顔で答える。 タケちゃんに会えるだけで幸せだし。 そう思っていたのに、タケちゃんは不満げな表情を隠さずに。 「でも男子校だし…心配だったんだよ。」 呟いた言葉と共に、私の頭をふわっと撫でた。 「…ありがと、タケちゃん。」 素直に感謝すると、タケちゃんは眩しい位の笑顔で。 私の手を取ると、簡単に私を腕の内に閉じ込めてしまった。 こういう時、細身のラインからは分からないけれど、やっぱり男の人だって思う。 頭の上から掛けられた、「良いよ」って言葉がいつもより近くて。 暖かくて、くすぐったかった。 それにしても。タケちゃんがやっとで私を放してくれたとき。 周りに顔面蒼白の人が多数いたのは何でだろう…。 後で聞いてみたけど、タケちゃんは教えてくれなかった。 「今日はどこ行こっか?」 デート、って言ったって私たちはまだ学生で。 お金もないし、そんなに毎日色々な所に行ける訳じゃない。 大体のデートコースはちょっとした寄り道。 公園行ったり、ゲーセン行ったり。 それはそれで、タケちゃんとの時間って感じで好きなんだけど。 今日はちょっと。 違うところに行きたいんだよね。 「…うーん…じゃぁ、お菓子。買いに行きたいかな?」 「お菓子?…駄菓子屋さんとかで良いの?」 「うん。」 「ん。じゃぁ行こう。」 不思議そうに覗き込まれた瞳に頷けば。 いつも通り手を差し出してくれるタケちゃんが居る訳で。 差し出された手に自分のそれを重ねてみれば。 ご機嫌に笑って、手を握り返してくれるタケちゃんが居る訳で。 当たり前みたいにそこに居るタケちゃんに、ちょっぴり安心したりして。 私達は商店街の裏道を通って、目当ての駄菓子屋さんを目指した。 「ー。これ見てこれ!」 「何?」 「チュッパシリーズが全部ある!」 「えー?…うわ、ホントだ。」 「チョコ系のまである所、久々発見〜。」 「あ、こっちにも懐かしいのがあるよ、タケちゃん!」 「どれどれ?俺も見たい!」 久々に来た駄菓子屋さんはやっぱりちょっと新鮮だった。 スーパーなんかで買うんじゃなくて、何て言うのか…。 そう、小さい頃に戻ったみたいな錯角を覚える。 気がつけば、店の人が小さく笑うくらい私達ははしゃいでいて。 仲が良いのね、なんて店の人の言葉に2人して笑って。 「楽しかったねー!」 「うん!マジ楽しかった!」 ケラケラ笑いながら店を出たら、ちょうど空は朱色に変わる頃だった。 少し寒い風。そんなもの気にならないくらい。 タケちゃんと私。 一緒に笑い合った。 「タケちゃん、タケちゃん。」 「ん?何?」 少し前を行くタケちゃんを呼ぶと、すぐに振り返ってくれた。 振り向く瞬間を狙って飛びつく。 今まで言いたくて言えなかった言葉と共に。 「Trick or treat!!」 バランスを崩すかと思ったのに、タケちゃんは倒れなかった。 「うわっ!?ちょっと待って、コケるってぇ!」 「あ、ごめん。」 「ったくー…お菓子がどうこうの前に悪戯するのかよ?」 「ごめんなさーい…。」 少し眉根を寄せるタケちゃんに、素直に謝る。 頭を下げたのと同時に、この悪い子めっ!って額を小突かれた。 ちょっといたずらが過ぎたかなぁ…。ってか、唐突過ぎだし。 いつ怒られても良いように待ち受けていたのに、タケちゃんは優しく頭を撫でてくれた。 触れられた瞬間、信じられなくて顔を反射的に上げる。 と、そこに見えるはずの笑顔は無くて。 あったのはさっきの駄菓子屋さんの紙袋だった。 「…じゃぁ素直に謝ったからこれあげるv」 「あ…えと…ガム?」 「うんっ!ガムの詰め合わせ俺スペシャル!」 「…こんなに良いの?」 袋の中には、大量のガム。 …箱買い!?ってくらいに大量で、しかも種類も豊富。 戸惑う私にタケちゃんはダメ押しの笑顔をくれる。 「、ガム好きでしょ?だからは笑って感謝すれば良いのv」 「…ありがとう、タケちゃん。」 「たーだーしッ!」 「へ?」 「Trick or treat!!」 そこには、いかにも勝った!って感じで悪戯に笑ってるタケちゃんが居た。 いつもの優しいタケちゃんじゃなくて、そこに居るのは。 悪戯大好きって感じの、タケちゃんっていう、男の人だった。 「え、うん。はいコレ。」 「……………あるんだ。」 「うん。タケちゃんチュッパ好きでしょ?」 「…ってか全種類!?」 落ち込んだり、驚いたり。 コロコロと表情の変わるタケちゃんに、私も悪戯に笑い返す。 「うん。だからタケちゃんは笑って感謝すれば良いのv」 「………?」 「仕返しの仕返しv」 「…参りました………ありがとう、。」 タケちゃんのありがとうの言葉に満足しながら。 もう1度、タケちゃんの手をとって、握り返されるのを待つ。 「あ、そうだ。公園で食べながら遊ぼっか?」 「………うん、行こう!」 憧れたお祭り、やっとで試せた。 タケちゃんが居るから、大成功は最初から決まってたけどね。 こうしていられると良いな。 ずっと。ずっとタケちゃんと一緒に。 10月31日、ハッピーハロウィーン! ***あとがきという名の1人反省会*** ゴメンナサイ。(いきなりか ハロウィンはとっくに過ぎたのに、書くのが遅くてゴメンナサイ。 もう、謝るしかないです。 とりあえず、タケちゃんとお菓子の交換させたかったというか。 あげる、貰うの一方通行じゃなくて、そこにはちゃんと 想い合ってるから通じるものがあるというか。 何かそんな感じだったら良いなぁと思います。(曖昧 あと、タイトルの「…」部分は「タケちゃん」が入る気がします。(やっぱ曖昧 それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!! 2005.11.9 水上 空 |