あぁ、オラはどうしようもね、ほんずなしだ。



にこやかに微笑むちゃんの前で、オラは、何度そう思ったろう。

きっともう、数えだしたら両手両足の全ての指ば手折っても足りねぐて、
そればかりか、どこまで数えたか、途中で分からなくなってまったり、
そのまま数え続けで、最後には嫌になってしまうのではねか。

多分、それくらいたくさん、思ってきた。







〜きみとぼくのセカイ〜







「古森君、学校、行こう!」


ちゃんが毎朝そやって、オラをわざわざ迎えに来てくれて。
帰りは帰りで、今日学校であったこと、感じたこと、色々話してくれて。

ちゃんはいつも嫌な顔1つせずに、笑顔でオラに接してくれて。
それなのにオラはちゃんの顔すら、真っ直ぐに見れね。

しかも、学校にはオラは行かねから。
ちゃんが迎えに来てくれても、オラは送り出すだけ。

どう考えても、いつオラのことを嫌いになってもおかしくねのに。
毎日、毎日。
ちゃんとオラを、見捨てねでオラを見てくれる。
そんな、ちゃんの事、どんどん好きになっていった。



一方的なもん、だけんども。
ちゃんの居ないセカイなんて、今のオラには考えられね、位。
そんくらい、この数ヶ月で大好きに、なってた。





学校には、やっぱり行きたくないのだけれど、毎日、本当に毎日。
オラのところに顔を出してくれる、笑ってくれるちゃんにだけは会いてぐて。
本当の本当は、休みの日にも、会いたいな、なんて考えたり。



君が、好きで、すきで。



最初は、申し訳ないな、と思って見れねがっただけのちゃんの瞳が、
今度は違う意味でも、見られなくなってまった。

ちゃんの瞳は、真っ直ぐオラを見てくれて、その瞳が、物凄く綺麗で。
目が合ったら…その、恥ずかしくて。
ちゃんが、気を悪くするんじゃねか、って思っても。見れね。





ピンポン、と鳴るチャイム。
トビラを開けると、いつも通りちゃんがそこに居て。

ただいま、といつもの笑顔でちゃん。
おかえり、といつもの小声でオラ。

そんだけで、本当に幸せになる。



立ち話、させるわけにもいかねぇはんで、最近は家に上がって貰う。
ちゃんの話に相槌を打つたび、話に出てくる登場人物達に嫉妬してまったり、
あぁ、もうオラはどうしようもないほんずなしだ。


でも今なら分かる。


その嫉妬は、ちゃんが好きだから、ちゃんと仲の良い人達に嫉妬する、
そういう理由だから、だけじゃねぐて…。
いや、それだけでも、物凄くからきじだ、と思うのだけれど。

オラの世界には、ちゃんがが居るけれど、
寧ろ、今のオラの世界の大部分はちゃんが占めてるんだ?だけど…

ちゃんの世界にはオラが居るけれど。

ちゃんの世界は、オラの世界よりも、当然だけれど遥に広いはんで。





いつか、いつかちゃんが。

オラの世界から、出て行ってしまったら、どうしようと。

この笑顔が、見られなくなってしまったら、どうしようと。

絶対に失いたくないと思ってまったからなんだ。







「もう、古森君!話聞いてる?」

「え、あ、あの…ごめん。わんつか…じゃね、少し、ぼんやりしてた。」

「そっか、疲れてる?それか、考え事?」

「あ、その…考え事。すまね。折角、ちゃんが話してくれてたのに。」

「ううん、いいよ。」

「………ありがとう。」


学校に行くようになったら、この不安はなくなるのだろうか。
ちゃんと、同じように学校に行って。
ちゃんの話に登場するように、オラはなれるだろうか。


「それで、何考えてたの?」

「内緒。」

「えぇ!ずるいよ、古森君!教えてよぅ!」


だばって、そうしたら、ちゃんが毎日此処に来ることもなくなって。
毎日話すことなんて、なくなってしまうかもしれねぐて。
こんな風に、ちゃんが笑いかけてくれる事も、もしかしたら。

でも。


「…まいね。まだ、内緒だ。」

「…じゃぁ、いつか、話してくれる気になったとき、教えてね?」





指きり、と細い指を差し出してくるちゃん。





「…うん、絶対、絶対約束する。」


オラは、その指に自分のそれを重ねて、笑う。
しっかりと、ちゃんの目を見て。
自分に誓う。

オラの世界だけにちゃんを閉じ込めておく気はね…けども、
ちゃんの世界から、オラをはじき出して欲しくはねぇもんだから、
ちゃんから、見捨てられないよう、
出来れば、ちゃんに少しでも好きになってもらえるよう。
オラは、此処から、世界を広げるんだ。



あぁ、今更こったら事思うなんて。
どうしようもなくオラは愚図で、…ほんずなしだ。



君がオラの前で笑ってくれる事以外、他はどうでも良いと思う位になって、
やっとで、踏ん切りがつぐなんて。

ほんずなし、ほんずなし。




「着慣れね、な…」


着慣れない制服に袖を通して、いつも通りの時間になるチャイムを待つ。
転校の日、よりも、何だかドキドキ、する。


セカイを広げる、のは。物凄く、ドキドキ、する。

でも、君が居るから、きっと平気だ。



「古森くーん!学校、行こうよー!」



オラは、緊張に震える手で、玄関を開けた。
驚きで目を丸くしたちゃんが、次第に笑顔になって、
オラも、ゆるゆると、頬が自然と緩んでいった。







***あとがきという名の1人反省会***
拍手から持ってきました!GS2隠しの古森氏。
…あのね、あのね、すっごく可愛くて。
もうどうしようもなくて書いちゃったんですよ…!
いきなり拍手とかに持ってってすみませんでした…!(土下座
これからも氷上君とか古森君とかガッツリ増えるかも…
GS2もご贔屓にしてくださると幸いです。

それでは、ここまで読んでいただき有難うございました。

2009.01.18 水上 空