俺も、随分とヤキが回ったもんだなァ ゆらゆらと立ち上る紫煙をぼんやり眺めながら、 俺は隣で寝息を立てる、まるで小動物みてぇなの髪を弄る。 癖のなく綺麗過ぎるそれは、俺の無骨な手の上を、指の間を、 はらりはらり、優雅に滑り落ちていく。 滑らかなその感触がたまらなくて、俺は不覚にもこうして、 何度も何度もその行為を繰り返しているという訳だ。 〜いとしくてしかたがない〜 滑り落ちた髪が頬にかかって、少しくすぐったいのか、 は、この狭苦しいソファの上で寝返りを打とうとする。 俺はこれ幸いとばかりにの体ごと引っつかんで自分に引き寄せた。 軽すぎる体を浮かし、俺の腿へ頭を乗せる。 ちゃんと喰ってるのに、重くならない身体は、やはり女のモンだと気付く。 丁度、膝枕と世間一般で呼ばれるソレは、俺のイメージとはかけ離れているのに、 相手がなら、イメージがどうこう以前に、自分から率先してしまうほどに 気分が良くなるものなのだと知った。 それこそ、口元が自然に緩んでしまうほどに。 やべぇなぁ、俺。 何度そう思ったか、もう忘れてしまっているのだが、 大抵の物事は、ヤバいと気づいた時には既に手遅れだ。 いつの間にか。 俺よりも一回り以上、歳の離れたの事が、何よりも大切になって、 が笑うんだったら、他の事ァどうでも良くなって。 ただ、の事は誰よりも知っていたいと思うし、 の事は真っ先に守ってやりてぇと思うし、 俺の目の届く位置に多少強引であろうと置いておきてぇし。 の口が、「次元さん!」といつもとても幸せそうに紡ぐから、 名前を呼ばれるたびに本当は口元が緩む。 に呼ばれるまま近づけば、は本当に嬉しそうに笑うから、 俺はの頭を撫で付ける。 は、そんな俺に満足したのか、無邪気に笑う。 この感情が家族愛や仲間意識で済んでいれば。 それは大層慈愛に満ちたもんだったはずだ。 この感情が恋だのいう青くせぇもんだったら。 それは大層綺麗なもんだったはずだ。 だが、実際はそうではない。 俺が生きてきた、この時間の中で、そんな感情を素直に持てるほどに、 俺自身、綺麗な人間ではないのだ。 に触れていたい、抱きすくめたい、口付けたい。 そんななまっちょろい思いですらなく、本当はもっと。 一旦口付けたら酸欠するんじゃないかと思うくらいに口内を犯してぇし、 運良く腰砕けにでもなってくれりゃぁ、しめたもので、 その場で押し倒して、の頭ン中、俺しかなくなるまで、壊してぇ。 気がつけば、そんな事を考えている。 一回り以上、歳の離れた、にだ。 勿論、そんな俺の心の葛藤をは知らない。 知っていたら、無邪気に俺に甘えるような事はしないだろう。 ふぅ、と溜息を吐くと、ベルメルの紫煙が口から零れて、部屋に消えていく。 それを辿って視線を這わせれば、最終的にはの元までたどり着くわけだが、 もうすっかり安心して深い眠りに落ちたのか、は身じろぎひとつしない。 すやすや規則正しく寝息を立てて寝ていて、あんまりにも幸せそうな。 俺がこんなに頭ン中、お前でぐちゃぐちゃなのに、 あんまりにも無防備な寝顔を見せる。 ふと、深く深く口づけて、の口から酸素を奪ってしまおうか、 そう考えて、考えるだけで行動に移さなかったのは、 俺のスーツのジャケットの端をいつの間にか握り締めて、しわくちゃにして、 無意識に俺に擦り寄るがいたからだ。 あぁ、クソ。 俺も、随分とヤキが回ったもんだなァ、ほんとによォ。 ***あとがきという名の1人反省会*** 最近日記で書いてた次元大介夢…です。(脱兎 もうホントに自分のためだけに書いてたって言うか… この際、ジャンル増やしたれ!とか思って…! ホント突発で申し訳ないです。 お気に召してくださった方が1人でも見えますように! それでは、ここまで読んで下さって有難うございました! 2008.08.09 水上 空 |