宣誓!

私は、今までのポジションをかなぐり捨てて!

正々堂々と、…とは言い難い手段を使うかもしれないけれど!

恋愛至上主義に則り!





あの男を、モノにすることを誓います!!






「って、、何ぶっ飛んでんだよ?」


グッと握り拳を小さく上げたその瞬間に、私の腕を軽くつついて。
隣の席の天国はニヤニヤと楽しそうに笑っていた。
その顔は小さい頃から見慣れてるけど。
今はこれ以上ムカつく事なんてない。
なんてったって。


「ちょっと!私の清くない宣誓の世界に勝手に入らないでよ!」

「清くないのかよ!?」


カッとなりすぎて回りが見えなくなっちゃうくらい。
強く強く、怒鳴り散らしたくなっちゃうくらい。
私にはあの宣誓は重要なものだったから。
だって私の好きな相手は。


「だから入ってくるなっての!不法侵入で訴えるぞ!」

「上等だ!何でも人情のみで解決を図るあの弁護士つけてブチ勝ったるわぁ!」

「五月蝿い天国!」

「それは、テメーだァ!!」





ココで、一緒に馬鹿やってる。
鬼ダチで、喧嘩して、同じクラスで、腐れ縁の。





「はい、それ以上馬鹿晒すなよーっと。」





ベシッ!ゴンッ!





コイツなんだか、…ら?







〜清くない宣誓のセカイ〜







「「げ、先生………。」」


いつの間にか立ち上がっての喧嘩に発展しかけたその瞬間。
絶妙のタイミングで頭に何かがぶち当たったと思えば。
鬼を背負ってる笑顔の先生が居たんだから。

忘れてた、今が授業中であったこと。
罰課題も、授業退場も、しっかりある先生だってこと。





笑顔の先生が怖すぎて、私達はそのまま教室を後にする事になった。

(だって後光ならまだしもどす黒いオーラ出てんだって!)

(あっ、チクショ、健吾笑ってやがる!)








2人並んで廊下に出て立ってると、それはそれは暇な訳で。
先生に静かにしてろと言われても、やっぱり話たくなるし。
それが好きな相手なら、話せないものなのかもしれないけど。
でも、好きの前に鬼ダチだから。


「天国のせいだからね。」

「元はがぶっ飛んでたからだろ。」

「…だからあんたのせいだっての。」

「何で。」


言いたい事は、口に出さなくても伝わっちゃうし。

それでも、本当に伝わって欲しい気持ちだけは全然伝わんないし。

隣で私の言葉を待ってる天国は。

凪ちゃんが、好きなわけで―――。



考えるたび、胸がチクン、軽く痛む。



「何でって。」

「言えよ。がそんだけ言い張るなら相応の理由があんだろ?」





ま、のことなら何だってお見通しだぜ!

なーんて、二カッと笑う。
元はと言えば、私が騒いで授業退場食らってるのに。
ホント、人が良いって言うか。何ていうか。
そういうの、凄く好きだけど。


鬼ダチって、辛いね。
大事なポジション、無くしてまでって思っちゃう。
いつの間にか心にブレーキかければ。
それで、いつも隣に居れる筈なんて。

逃げ場所が、大事なポジションだから。
どうにも足がすくんで、今まで動けなかった。

この間、ちょっとだけ、天国と鬼ダチじゃなかったら良かったって考えた。
だけど、そうしたらコイツが私に話しかけることなんて多分ない。
考えただけで、涙が出そうだった。

隣に、居る事すら出来なくなるのは嫌だ。

でも、でも。
振られでもしたら、同じかもしれない。





「天国。」

「何だよ。」


そんなわけないのに。
だから、さっきも宣誓して。
自分の気持ちをプッシュしたんだ。



天国が、私の鬼ダチをやめる日なんて、きっと一生来ない。
本当は、ずっと前から知ってたのに。
私が、どんな我侭を言ったって、怒らなかった天国。
どんな喧嘩しても、次の日、笑いかけてくれたのは。


隣で笑う、天国だったのに。





「     」







距離を埋める。


私は何を、今まで心配してたんだろう。


眉根を寄せる間も与えてなんてやらない。
隣に天国が居る瞬間を、大切にしたい。
天国の隣に居られる時間がもっと欲しい。



天国が欲しい。



友達の距離を通り過ぎてなお、私は近づく。
恋人の距離まで、勝手に埋めて。
頬に軽く。





「…隙あり。」

「あ、お、おまっ…えぇ!?」





顔を赤くして、叫ぶ天国は放っておいて、私はそこを離れた。

チャイムが鳴ると同時に廊下が騒がしくなる。

天国の叫ぶ声も飲み込まれた。





「これからもっと本気出すから、覚悟してよね?」





きっと、この後の私の呟きも。


凪ちゃんに、あげるつもりはないからね?





清くない宣誓のセカイ

(お前、さっきの、ほんとなの、か?)
(何キョドってんのよ、ばーぁか。)
(はぁ!?元はと言えばだなぁ!)
(…もっかい、口ふさいであげよっか、あ・ま・く・に?)








***あとがきという名の1人反省会***
大分前の拍手より持ってきた天国夢。
実際に相手が決まってるキャラは書きにくいですな。

加筆に当たって色々いつもと違う事してみました。
ちょっと読みにくいかなー…感想頂けると嬉しいです。

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

加筆修正 2007.04.22 水上 空