たとえば、それが何の意味も持たない時間だとしても。 〜特別でないただの日常〜 久しぶりに部活が無い。 嬉しそうに司馬君が話したのは昨日のこと。 野球好きなのに、お休みが嬉しいんだねって揚げ足とってみたけど 一緒に居よう?って返されてしまえばそれまでな訳で。 ストレートな言葉が伝わる。 それだけなんだけれど、すごく嬉しいから。 私は幾分上にある司馬君の視線に、自分のそれを絡ませてから ゆっくり、確実に頷くんだ。 そうすれば、司馬君が頬を染めて笑ってくれるのを知ってるから。 そして、今日。 親が腕をふるって作ったご飯を食べ終えて、少し。 私の隣、司馬君が首を傾ぐ。 サングラスの奥の瞳が、どうしたの、優しく聞いた。 それから、少し遅れて、大きな手が私の頭を滑る。 「ん…ちょっと眠い。」 ご飯を食べたら眠くなるよね、そういうと司馬君は笑った。 声は上げない、表情だけ。 それでも、言いたいことはちゃんと伝わる。 それって、私と兎丸君だけの特権だよね。 隣に居ていい証みたいで、すごく嬉しいんだけど、そんなことは言わない。 きっと司馬君も分かってるから。 「司馬君、ちょっとたったら起こしてくれる?」 肩に頭を預けて聞く。 見上げることはしなかった。 了承を表すように、司馬君がもう一度、私の頭を軽く撫ぜたから。 司馬君の手は、そのまま私の頭の上を何度も何度も上下して。 時折、私の髪の毛を指で絡めとったりしながら。 そこに音は無いのに、声も無いのに。 おしゃべりなはずの私はどうしてか音の無い空間に安心して。 軽くおでこに触れた感触がくすぐったいなぁとか。 サングラスのフレームかな、少し冷たかったとか。 いつの間にか司馬君が凄い近い、とか。 心音が体全体を通して伝わってるみたい、とか。 ぼんやり考えてたことは、全部司馬君の体温に溶けて。 いつの間にか私から全部の思考を奪ってしまう。 こんなこと思うなんて、おかしい話かもしれないけど。 ただ、恋愛に溺れている、そう言ってしまえばそれまでだけど。 司馬君の体温に包まれて、ゆるく目を閉じてる。 愛の言葉を綴ることも、司馬君のMDの音もないこの時間。 それは、本当に本当は意味のない時間かもしれないけど。 私の中では何よりも大切で。 一番近くで、司馬君を感じていられる瞬間なんだと思う。 あぁ、これ、なんていうんだっけ。 「………起きてる?」 「うん…何?」 ―しあわせだね― 耳元で聴こえた、久しぶりに聞いた音。 司馬君の声。 目を開いて、最初に見たもの。 サングラスの奥の、司馬君の優しい目。 しあわせだね。 君が傍にいるから。 ***あとがきという名の1人反省会*** 改めまして、明けましておめでとうございます! 本年も僕色曜日。及び水上空を宜しくお願いします。 さてさて、今回は少しだけ書き方を変えてみました。 違和感ありますかね、頑張ったんですけど…。 ただの日常って、ホントは最も重要だと思います。 自分の好きな人と一緒に居るって結構それだけで奇跡です。 そんな日常、皆さんも大切に感じてくれますようにv それでは、ここまで読んでいただき有難うございました。 2007.01.03 水上 空 |