毎日の日課になったこと。

いつもみんなの前を走ってた僕が、追いかける側になったこと。



僕の目の端に、見慣れた後姿。
小さくて、豆粒大だって、見分ける自信が在る。
そんな、大好きな後姿。
通学路で見つけては、一番に挨拶をする。





追いかけて、追いかけて。







〜すっ!ぐっ!にっ!ダイビング!〜







「眠〜………。」


通いなれた道をぼんやり歩く。
今にも瞑ってしまいそうな目を必死に開ける。
堪え切れなかった欠伸が漏れる。


「ゲーム、やりすぎちゃったなぁ………。」


昨日は、ゲームに集中しすぎて。
明け方近くにようやくクリアしたーって思ってたら。
流石、大手のRPGメーカーと言うべきか。
エンディング後にも、隠しダンジョンがあったなんて。

お陰でクリアは当分お預けみたいだし。
ムキになってやりすぎて、徹夜しちゃったし。
今日はもう、走るのも面倒くさい。

そう思ってたときだった。





「あ。」





大好きな後姿を発見したのは。


眠気も忘れて、僕は走る。


大好きな、後姿を追いかけて。





すっと、風に溶けて。

ぐっと、土を踏みしめて。





ちゃん!」





仕上げに。

にっと…最大限の笑顔を、ちゃんに向けて。





「きゃぁっ!?」


抱きつけば、ちゃんの愛らしい声。
ちょっと驚いたような顔が、それでもすぐに笑顔になった。
抱きついた僕を、拒むそぶりもなく。


「おっはよー、ちゃんっv」

「もう…危ないからやめてって言ってるでしょう?比乃君。」

「えへへ、ごめーん。」


頭をかきながら、ちゃんの隣に並ぶ。
ちっとも反省なんてしてないんだけれど。
朝のダイビングも止めようとしてないんだけれど。


「怪我しても知らないからねー?」

「怪我なんてしないもーん。」










ちゃんもそれが分かってるのかな?










「次は避けてあげるね。」

「えぇー!?やだやだやだーぁ!」

「嘘。避けないよ。」

「ほんとー?」

「うん。でも怪我するかもしれないから、極力控えてね?」


次、なんて。
僕が反省していれば、来るはずがないのに。
にっこり笑顔で、微笑んでくれるんだから。










「はぁーいっv」










それが、僕をどれだけ嬉しくさせるか、知らないでしょう?
僕が、どれだけこの時間を大切に思ってるか、知らないでしょう?

どんなに寝不足だって。
どんなに落ち込んでたって。



すっと、風に溶けて。

ぐっと、土を踏みしめて。

にっと、最大限の笑顔を向けて。



ちゃんの元へ、飛んで行きたいと思ってるんだよ?

ほんとは、大好きだーって、大きな声で叫びたいくらい。















だから、君を見つけたら。

これからも、僕は飛ぶよ。





すっ!ぐっ!にっ!





ダイビング!!





きっちり受け止めて貰うよ?

僕の、愛ごと。

全部、ぜーんぶねっ!







***あとがきという名の1人反省会***
拍手用に書いた、比乃夢…第2弾!
何だか比乃は拍手用が書きやすいみたいです(笑
そんな長いのが書けないってことですね…。
これ、構想は大分前から出来ていたのに、
何となく先延ばしになっていたもの。
日の目を浴びることが出来てよかったね、比乃。

それでは、ここまで読んでいただき有難うございました。

2006.03.28 水上 空