人間同士は、いつの日か。
自分が想う、相手を見つけて。自分を想う、誰かを見つけて。
そうやって、相手と支えながら生きていくらしい。
そうやって、相手を幸せにして生きていくらしい。

今まで、どうでもよかったけど。最近はちょっと気になる。
でもどうしようもないよな。こんなこと気づいたって。
だって、姿も見せられない。想うだけは苦しすぎる。
でも、どうしても傍に居たい。叶わないことだけど。

俺がいたら、きっと幸せどころか不幸にしちまうから。





だって俺。…死神なんだから。







〜背中合わせの体温。〜








最近、俺には宿主?がいる。全世界を変える神になるとか言ってる、夜神ライト。
最初はスケールのでかさが気に入って、人間界を見るのが好きな俺はこいつに取り付くことにした。
こいつってば、嫌味なほどに頭よくって、東大主席合格をしてしまったんだが。
最近、あんまり学校に行かなくなっていた。
Lと名乗る人物に張り付かれていたからだろう。
だが、俺には最近。ほんのつい最近だが。
学校に行きたい理由ができてしまった。


{ライトぉ…}
「何だよ、リューク。林檎ならさっきもやったろ。」
{違う…早く学校行こうぜ!?朝からちまちま作業してないで、学校、学校!!}
「わかったよ…でもなんで学校におまえが行きたがるんだよ。死神のくせに。」
{…何でもいいじゃねぇか、行こうぜ。}
「ふぅん…まぁいいけど。あんまり学校の中を徘徊するんじゃないぞ、この前みたいに。」
{げ…ばれないからいいだろうが!!}





俺の学校に行きたい理由は…ライトから少し離れたところにあった。いや、居た。
学校で、ライトの近くに群がる女とは違う少女だ。
名前は、確か。そうだ、
ライトは話し掛けることもないから。ライトにくっついてるままじゃ傍に行けない。
顔は、清楚な感じで。髪は、透き通るような薄茶色の長い髪。
大人しくて、しかも。
神だの精霊だのをちゃんと信じてた。





だから、余計に興味を引かれたのかもしれないな。





俺が傍に寄ったところで、大抵の人間は何も感じない。(鈍感だからな、人間って。)
でもは違った。
「誰か、いるの?…神様かな、ちょっと、冷たい空気。今日は暑いから、気持ちいいね。」
そう、俺のほうを振り返って、笑った。

その時のの笑顔が、あまりにも可愛く見えたから。
もっと、の傍に居たいと思った。
…いっそ、ライトがノートの所有権を放棄してくれないかと真剣に考えたのは、ライトには内緒、だ。





だから、今朝も俺はライトに学校学校と叫んだのだった。





学校に着くと一目散にのほうに飛んでいくリュークを見ながら、ライトはため息をついた。
「あれでばれてないと思ってるんだから…死神ってやっぱ素直なんだな…」
違うな…とライトは言い直した。
「嘘がつけないって言うより、知らないんだな、きっと。」
そう言って、苦笑した。





の後ろにリュークが立つと、はふっと後ろを振り返った。
その顔には、微笑みが浮かんでいる。
リュークの後ろのほうで、男子学生のざわめきが起こる。
人気が高いほうなんだな…とか思いながら、リュークも微笑む。
微笑みの原因は、の微笑みが自分に向けられたものだと知っているからだ。
{嬉しいもんだな…}
ライトから遠く離れた位置のリュークのつぶやきは、誰にも聞かれなかった。

「今日も、また一緒に居てくれるのね、ありがとう。」
は小さな声でつぶやく。
最近はこの言葉を繰り返す。
また、それと同じくらい
「貴方の姿が見てみたいけど、それはしちゃいけないことなのよね、きっと。」
とも。
そうつぶやくの顔は。とても哀しそうで。淋しそうで。

その度、リュークは困惑する。
姿を知ってほしい。自分を感じ取れるに、今度はその眼で俺の姿を見てほしい、と。
だが、そんなことはできないことを知っている。
ライトが許さないということもあるが。問題はそれ以外にある。





――シニガミガ、トリツイタニンゲンハ、フコウニナル…――





このの望みだけは、きいてはいけない。
絶対に。これだけは。
どれだけが望もうと、を不幸にしたくなかった。
いつでも笑っていてほしかった。

それに、は己の姿を見て驚くだろう。
こんな顔、見られたら。きっと。
は。俺を嫌いになるだろうから。

だから、伝えきれない想いを。リュークはを抱きしめることで伝えることにした。
ただ、後ろから、抱きしめて、抱きしめて。
そんなことしかできないから。
「…慰めてくれてるの?ありがとう、優しいね。冷たい空気が、気持ちいい。」
{俺がやさしいのは…まぁだけ特別ってやつだな…}



その日は、ずっと。と一緒に過ごした。
って言っても学校にいる間だけ。
名残惜しいが仕方がない。俺の、宿主は夜神ライト。

「また、明日ね。神様。」
微笑んで手を振るは、女神…みたいだ…なんて。ガラにもなく考えて。
止まらない想いを死神生涯のファーストキスにかえて。
{また、明日な。。}
は、気づいたかわからないけれど。
それでも俺は、満足だった。







背中合わせの体温に。はちゃんと気づいてくれたから。
姿は見せてはやれないけど。
傍で見ててやる。

が気づいてくれたから。

背中合わせの体温は。
その日から。
向かい合わせの、体温。







***あとがきという名の1人反省会***
何を考えたんだ、私は…。
問題作ですね、何でライトより先にリュークなんでしょう?(笑
確かこのとき、コミックスをまとめ買い(大人買い?)してた頃です。
それで、

「あぁ、リュークってば純粋〜(笑」

と考えてたから浮かんだ作品です。


姿を見せたくて、でもできなくて。


そんな甘酸っぱい恋心を分かっていただけると幸いです。
青春ってこんな感じですかね。(とか言ってみたり

では、ここまで読んでいただきありがとうございました!!

2004.10.19 水上 空