真冬はとうに過ぎ去った。

最近では春一番が吹いた、とか。
桜の開花予想が出たりなんかして。
街は降り立った春の精を、真っ向から迎え入れてる感じ。


「おはよう、L。」

「おはようございます、。」


薄く目を開けた瞬間に、額に口付けを落とされる。
回された腕に擦り寄れば、そこにLの体温が移る。
布団の外に出ていたらしい私の肩は、何だか強張っていて。
寝違えたかな、なんて首を捻れば、すぐにLの手がそこを摩る。

一緒の布団で寝ていたのに、冷え切ったらしい私の肩。
ちょっと、外気に触れただけだと思うんだけど。





春だといっても、まだ明け方は寒いみたい。







〜あと2分〜







「外、寒いかな。」

「出掛けるんでしたっけ。」

「ううん、そうじゃないけど。」


Lの腕の中にすっぽり納まって話す。
腕枕の状態のまま擦り寄っていけば、Lは私を落としたりなんてしない。
片腕はジッとそのまま耐えて、もう片方で私を優しく抱きとめてくれることを知っていた。
少しだけ段違いになった頭の位置は、いつもより近い。



甘えるように擦り寄って、優しいLを独り占めに。



といっても、…こんな平和な時間は長くは続かない。
するりと布団から這い出る直前にもう1つだけ軽く口付けて。
Lはいつものようにトレーナーに手を伸ばす。





…同時に、エアコンのリモコンにも。





「室温は上げておきますよ。そうしたら大丈夫です。」

「…起きたくないよー………。」

。」


ピピッ。
小さな電子音と共に、部屋に満ちる温度。


「だって絶対起きたら寒いよ。」

「…服を着替えたらしゃんとしますよ。」


外気が温まるまで、Lはあやす様に傍に居てくれる。
着替えの手は休めることなく、ベッドに腰掛けて。
私が手を伸ばせば、しっかりと手を繋いで。
ベッドから起きようとしない私の頭を軽く撫で上げる。





負けないくらい私の体温も高いんだろうけれど。

Lの体温は…心地よくて。

エアコンの温度なんて、欲しくなかった。





軽く私を抱き起こそうとするLの腕に必死で抵抗。
布団を被ったまま、いやいやと首を振る。


「………暖かいし、このままが良いな。」

「ほら、起きましょう?」

「後ちょっとー。」

「………困らせないで下さい、。」


Lの力に抵抗できる術は無いのだけれど。
必然的に無理やり起こされてもLの胸をとんとん叩いてみたりして。
頑固ですね、と溜息を吐かれたとしても、私はそれをやめたりしない。





だって。





このまま此処で離れてしまったら。
次は何日後に会話らしい会話が出来るかなんて分からない。
それ以前に事件で忙しいんだし、…いつ、会えるのかも知れない。





だからせめて、こんな寒い春の朝だからこそ。










「L。」

「何ですか。」

「…あと2分だけ、一緒に居て?」





あと少しの時間だけでも良い。

たった、2分。

それだけで、我慢するから。

Lの体温を感じていたい。

Lに触れていたい。

………傍に、居たい。





そっと離れたLの肩に触れて。
足らない距離は私から埋めるように、軽く口付ける。
Lの唇を舐め上げたら、離れる時、ほんの少し銀糸が伝った。










「じゃぁ、………24時間ほど。」

「本当?」

に嘘は言えません。」


24時間も一緒に居たら、ワタリさんが怒ると思うんだけれど。
捜査本部の人も、捜査が進まないーって喚いたり。
ちょっとだけの我侭のつもりが、結構大事になっていたりして。





「愛してます、。」





それでも、私の頭の中は、恋する女の子モード全開で。
ピンク色の霧がかかって、捜査本部の事なんてもういいや、なんて。
Lの事以外を考えられる暇なんてない。



トレーナー越しに伝わるLの温もりとか。

啄ばむように何度も落とされる口付けのくすぐったさとか。

にっこり笑う時の、Lの優しい表情とか。

Lの愛を感じることで精一杯。



こんな幸せ。
あと24時間はノンストップで感じられるなんて。
緩んだ頬が染まるのも、無理がないかもしれない。
隙間がないくらいに密着して隠そうとしてはみたものの。
どんどん溢れてくる想いなんて、隠し通せるはずはない。















は、寒いのは嫌いですよね?」

「………うん?」


不意に掛かった声に、ビックリして顔を上げる。
そこには、優しい笑顔なんだけれど、なにやら思案中なLが。


「じゃぁ、暖かいのは?」

「好きだけど…それが何?」

「冬より夏が好きですよね?」

「う、うん。」


急に始まった質問攻めに、訳も分からないまま答えを返す。
Lの真剣な瞳に吸い込まれるかと思った。


「じゃぁ、熱いのには耐えれますね。」

「え、ちょ、ちょっとL…?」

。」







刹那。







「一緒に熱くなりましょう?」










ついさっきまで隣で微笑んでいたLは、いつの間にやら私の上に。










「勿論、煽ったのはですから…拒否権はありませんけど。」





優しい微笑みは絶やさぬままなんだけれど。
妙に艶っぽさが増したのは、私の気のせいじゃない。
情熱的な口付けを一身に受けながら。
私の耳は、ピピッ、遠くで鳴ったエアコンの音を聞いた。







***あとがきという名の1人反省会***
やーっちゃーったー!(絶叫
何か微エロっぽくないですか!?いや、それほど
描写は出てきてないけど!!(駄目やんね
裏とか書く気は全くなかった水上ですが、
何となく、ここまでならセーフかなぁ?と思って
書いてみたら…あれぇ?良いの?これ?
微妙に裏っぽくもあり、ただのじゃれあいぽくもあり?
どっちつかずな出来栄えで申し訳なかったり。
御題を消化できたこと以外のメリットは果たして
あるんでしょうかね…orz

それでは、ここまで読んでいただき有難うございました。

2006.03.10 水上 空