「御門先輩。」

「なんだい?」


秋の風にも耐え抜いてきた葉が、力なく舞い落ちる。


君と行動するようになって、色々な事を学んだ。
君の教えてくれることが、どんなことであっても。

僕は逐一耳を傾ける。

流れる声を耳に留めることが出来て。
尚且つ、君が微笑んでくれるんだから。





「桜の花びらを地面に落ちるまでにキャッチできたら。」





宙を舞う枯葉を目で追いながら。
必死でそれを掴もうと手を伸ばす君。

その中の1枚を掴んで、満足そうに笑う。
掴んだ葉を僕に見えるように高く上げて。





「幸せになれる、って本当ですか?」





春を連れてきたかのように。
君は、優しく笑う。







〜もうすぐ春です〜







「…君はどう思うんだい?」

「出来てから考えようかと思って。」

「それもそうだね。」


クスクスと小さく笑うと、少し前を歩く君に追いついた。
ご機嫌を損ねてしまったのかと顔色を伺う。
どうやら、次に落ちてくる葉にご執心だったようで。
僕の顔を一度も見ることもなく、呟く。










「枯葉で練習できますかね?」

「練習してまで幸せになりたいのかい?」










小さな声に尋ねると。
ぴょんと跳ねた君は、目的の葉を手中にしていた。

嬉しそうに葉を撫でる君を見て、僕も微笑む。


問いかけの返事は返ってこなかったけれど。
この表情を見れば分かるというもの。
髪を梳くと、やっとで目を合わせてくれた君が。
花のように微笑む。



自由で、柔らかい。

そんな君が、好きだった。















「だから、早く春にならないかなぁって思います。」

「…それは僕なんか早く卒業しちゃえって事かい?」

「あ、いや。そんな訳じゃ………。」


僕の言葉に慌てる君。
裏表のない言葉だと知ってカマをかけたのに。
必死に否定しようとする君が愛しかった。


「分かってるよ。」


ごめんね、と付け足して君の髪を撫でる。
嬉しそうに目を細める君を、僕は躊躇うことなく引き寄せる。


「でもね。」


腕の中で、甘えるように頬を摺り寄せる君の。
顎を捉えて、触れるだけの口付けを落とす。















。君はただ、僕の愛情を受け止める練習だけしていれば良いんだよ。」















真っ赤になって固まった君に。
僕は一言、付け足そうと思う。





「駄目かい?」





もうすぐ、春だね。

卒業を連想させてしまう春に。

別れを連想させてしまう春に。

桜の花びらに幸せを願わずとも。







…君を幸せにするのは僕なのだ、と。

僕は、誓う。







***あとがきという名の1人反省会***
久々に御題をこなそうと思って書いてみました。
…ネタ的には最近ふっと思いついたこと。
別れの季節に幸せの約束をしたらどうだろう。
きっと嬉しいんだろうな…みたいに考えました。
ただ、人選的には使えるキャラが限られていて…。
クソ寒い台詞をクソ甘く吐いてくれるような…。
…ねぇ、牛尾ですよ。ですから。(笑

それでは、ここまで読んでいただき有難うございました。

2006.01.09 水上 空