雪景色が街を彩る、年の瀬。
また雪が降ってきたのか、外は思いのほか静かだ。

今年も後数分。

紅白歌合戦をつけながら、寛いでいるリビング。
窓が、2人分の熱気を感じて白く曇る。


「なぁ。」

「何、サンジ。」

「こっち向いて?」


呼ばれて振り返るより先に、顎を捉えられた。







〜霧のかかる夜、貴方しか見えない〜







スルリと回された腕に優しく抱きとめられる。
突然の子とに目を瞑るのも忘れ、…いや、寧ろ大きく見開いた。

触れるだけのキスが何度も繰り返される。
頬に、額に落とされるそれは、いつも以上に優しい。
顔が離れるタイミングを狙って反論しようと思うのだが、それもままならない。



口を開いた途端、隙間からねじ込まれた舌に、言葉を奪われた。



今度は何とか間に合って、目を瞑る。
時折聞こえてくるサンジの息遣いに、頬が火照っていく。










名残惜しそうにゆっくり離された唇。
サンジの瞳に揺れる私。
熱に浮かされたように火照った頬を見て、思わずサンジを突き放した。



もう一度、テレビに向き直る。
歌っていたアーティストは、ステージを降りた後だった。
今は次の…ナントカって言う、演歌歌手が歌っている。


「馬鹿サンジ。」

「いいだろ、チャン。」


横から抱きついてくるサンジを振り払おうと腕に手をかけた。
しかしそれはあっさりと捉えられる。
強く、握られている訳ではない。





さも、愛おしそうに。

緩く包み込まれただけだ。





「良くない。離して。」

「イーヤ。」


耳元で囁くサンジの声が、私の脳を揺さぶる。
これ以上ないだろう、と言うほどに頬が染め上がっていく。
身を捩っても抜け出せなかったサンジの腕は、とても心地良い。
それでも、抵抗してしまうのは…きっと恥ずかしいからだと思う。





そっぽを向いた私を、サンジは責めない。

可愛い、そう呟いて私の髪にまたキスを落とす。





「離して。」

「何でさ。」





だって。
スキンシップ過剰すぎる。





「ほら、テレビ見てるじゃん。」

「録画だってしてるンだろ?」

「そうだけど…。」





照れるじゃん。恥ずかしいじゃん。
私だけ、こんな赤くなって。
舞い上がってるんじゃないかって。
そう思うんだもの。





は俺が嫌い?」

「…そんな事ない。」


「何その間。」

「嫌ってるはず、無いじゃない。」


抱き付かれた姿勢のままの会話。
引き離すのは諦めた。
広い胸に自分から、身を預ける。

腕を回すと、サンジの心音が聞こえてきた。
トクトクと心地よく響く音。
目を瞑って聞く、優しい音に被って、上から声が掛かる。










「良かった………。」










はっきり分かるほどの安堵の声。
少なからず嬉しさも含まれた声に、私はもう一度身を寄せる。





頭を撫でる大きな手。

強引な手口の、それでいて優しすぎるキス。

ふと見せる艶っぽい表情。



私は、サンジに酔って、充分に溺れていた。
優しい腕の中で、安心していた。





優しく撫で上げられた頬に気付いて、視線を上げる。
真剣な表情に、一瞬身動きが取れない。
避けようと思えば避けれた筈。
否、避けようという気すら起きなかった。










重ねた唇は、どうしてこんなに甘いのだろう。

息をするのも惜しむくらい。

夢中で、舌を絡ませた。

今頭の中を覗いたら、真っピンクなんだろうなとか。

回らない頭で考えた。















……………ゴ―――ン……………





「「あ。」」


2人同時に反応した。
声を出したのと同時に、少しだけ離れた。
それでも、抱き合った姿勢のままだったけれど。

息が掛かるほど近くに居たさっきよりは、心持ち距離を開ける。
私の顔が、サンジの瞳で揺れる。
焦点の合う、ギリギリの位置でサンジを見るのはやはり恥ずかしい。

優しく投げられた笑みに反射的に目を逸らす。
ネクタイの結び目辺りまで来た時に、再び優しく抱きしめらた。


「鳴り始めたね。」

「今年も終わりか…。」

「サンジも行ってこれば?」

「叩きに?」

「うん。煩悩アリアリみたいだからね。」


笑いながら答えると、サンジは軽く私を小突く。
そのままその手は解かれ、頭を撫でる。
優しく、優しく。





私の自惚れでなければ、それは。





「良いの、俺は。」

「私が良くないよ。」

に触れていられるなら、それで良いよ。」





大切な、宝物に触れるように。





「だから…今年中。も、俺だけ感じてろよ。」

「ちょっと、サンジ…」

「聞こえねェ。」





聞かなくても、分かる。

アイシテル、のサインのように。















私の自由は、また奪われた。

甘く響く声の持ち主に。

何度も、何度も。

深く、優しく。

時には、軽い痛みすら残して。





除夜の鐘が遠のく。
ピンク色の、幸せという霧に、かき消されて。















。」

「………なぁに?」


ぼんやりと見上げる
頬は上気して、焦点を結ばない目をして。
それでも必死に俺を探すは、これ以上ねぇくらい可愛かった。


「………何でもねェ。」


取り合えず、明けましておめでとうと告げる。
同時に額に口付けることを、俺は忘れなかった。





言いたかった言葉は、飲み込んだ。

愛してるなんて、言わなくても。

ありえねぇ位、伝わっているだろうから。







今年も、一緒に居よう。





細い線の身体を、もう一度。
今度は強く抱きしめた。







***あとがきという名の1人反省会***
サンジ久しぶり…。書き方忘れました。
イヤ、寧ろ書き方が分かったことがありません(ぇ
年末ドリームって事で、書いてみました。
クリスマスに書いてるんだから…そっちを書けよ(遠い目
そしてナントカっていう演歌歌手は誰だよ。
って言うかなんでパラレルなんだよ…。

ツッコミどころは満載ですが、敢えて気にせず(気にしろ
生暖かい目で見守ってくださると嬉しいです。

それではここまで読んでいただきありがとうございました!!
メリークリスマス★

2005.12.25 pochi