想いが通じて、付き合い始めたのは3週間前。

それから今日まで、私たちの間には特に以前と変わったところはない。

毎日一緒にバカやって、一緒にはしゃいで。

まったく、色恋が絡んだとは到底思えないような日々だ。

漫画やゲームなんかとは違う。
勇気を出して告白したところで、現実、そんなに直ぐに劇的な進展はあまり無いものだ。
というか、劇的に変化してしまったのならば、
私はきっとそれについていけないだろうし、周りだってそうだ。
それならば、劇的な進展なんて望まなくていい。







〜劇的・ビフォーアフター〜







「スイッチー」

『どうした、


今日もスケット団の部室を訪ねてくる依頼者は居なくて。
さっきまでゴロゴロと寝転がりながら暇だ暇だと呟いてたボッスンでさえ
今じゃもう日当たりの良い特等席を陣取ってのお昼寝中。
ヒメちゃんも今日はキャプテンと一緒に外に出ていて、
ツッコミも居ないからなのか、スイッチはいつも以上に無口だ。

パソコンのゲームに夢中のスイッチの横で私が名前を呼ぶと、
スイッチはこちらを振り返ることなく、ただ間髪いれずに返答を返した。


「ひーまー、かまってかまってー」

『じゃぁこの新作ゲームでも一緒にやるか』


ひょい、と開かれたノートパソコンを覗き込むと、
私の目には美少女ゲームの鮮やか過ぎる画面が飛び込んできた。
鮮やか過ぎる画面から目を背けるためにも、と視線を上げると、
そこには口元と目元を少々綻ばせたスイッチがいた。





付き合い始めて少しだけ変わったことといえば、

前より少し、スイッチの見せる表情が柔らかくなったことと、

私がスイッチの傍に寄ったときに、頭を撫でてくれることが増えたくらいだ。





「美少女ゲームはやらないよ?」

『じゃぁ一体どうやってかまえと言うのか!』

「いやむしろ美少女ゲームしか持ってないのかよ、今!」

『…どうやってかまえと言うのか!』

「ぼかすなよ、答えを!…あーもう、スイッチが考えてください!」





友達の延長線上をのんびりと歩くようなお付き合い。

私もそれでいいと思っていたし、きっとスイッチだってそうだ。

と、思っていた。










『………いいんだな、

「へ?」

『本当に俺に決めさせていいんだな?』


スイッチの肩を軽く小突くと、私の手がそこから離れるより前に、
スイッチの大きな手のひらが、私の腕を掴む。

今まで、こんな風に腕を掴まれた事はなかった。
掴まれた腕は全然痛くないのに、私の力ではソレを振り払う事は出来ない。
力を入れて引いても、私の腕はスイッチに掴まれたまま、その場で静止している。

スイッチの表情を伺えば、いつもとは違う、
真剣な、何もかもを見通すような目で私を見ていた。





『時間は、戻すことは出来ないぞ』





友達の延長線上をのんびりと歩くようなお付き合い。

私もそれでいいと思っていたし、きっとスイッチだってそうだ。

と、思っていた。

のは、実は私だけだったと悟る。


「スイッチ…?」

。俺はが思っているほど、紳士じゃないぞ』

「スイ、」


いつの間にかノートパソコンのフタは閉じられていて、
優しく頭の後ろに回ったスイッチの手が、
私の髪を軽く梳かして、それから少々強引に引き寄せる。

目の前に迫ったスイッチの顔から目を逸らせなくて困っていたら、
スイッチは、ふ、と目元も口元もそれはそれは優しく綻ばせながら笑っていて、
どうにもこうにも直視できなくて、私は目を閉じた。



私の唇に触れた、少し冷たい、スイッチの唇。

啄ばむように何度も何度も触れた。

途中、頬に触れたスイッチの唇がくすぐったく動く。

声は聞こえなかったけれど、唇が、「」、私の名前を呼んだ。



次に目を開けた瞬間。
私とスイッチの関係、周りに見える景色。
すべて、劇的に変わっているのだろうか。

期待と不安で逸る心臓の音を聞きながら、
私はそこに馴染めるのだろうか、と考えて。
考えてもしょうがないのだろう、と1人で納得した。



馴染めようが、馴染めなかろうが、

目の前のスイッチとの関係も、見える景色も、

スイッチの言ったとおり、もう、元になんて戻せないけど。

それでもいい、しあわせだ、と。

スイッチの腕の中で、私は一人、笑った。







***あとがきという名の1人反省会***
スケットダンスのスイッチが好きでスキでたまりません。
ただそれだけで書き殴ってしまった。
椿とボッスンは良く見かけるけど、スイッチは
夢自体あまりないので…私はポ/ン/デ/ラ/イ/オ/ンになります。
究極の自給自足にお付き合いくださいまして有難うゴザイマス(逃

それでは、ここまで読んでいただき有難うございました。

2008.11.23 水上 空