暖かな陽気は久しぶりで。
今日は外に出て何かしようと思ってたんだけど。
外に出てまでしたい何かは、見つからなかったから。
自分の部屋で日向ぼっこしながら本を読むことにした。



本を開いて数秒後。



ちゃ〜んv」

「………。」

「…ちゃん?………無視は流石に傷つくよ?」

「………何?」


邪魔者…もとい、サンジは現れた。
大きな音を立てて扉を開いて。
それでも、返事を返すまでは部屋に入ってはこなかった。





「コーヒー飲む?」

「有難う。」





両手に持たれたカップから、引き立てコーヒーのいい香り。
白く昇る湯気が今日はあまり見えない。
湯気の薄いベールの向こう。
明るく笑うサンジが眩しかった。







〜好きの大きさ〜







「何読んでンの?」


私の隣に陣取ったサンジは、肩越しに本を覗き込んでくる。
少しだけ目線を向ければ、ワクワクと言うか、楽しそうなサンジの顔。


「…サンジは興味なさそうな本。」

「教えてくれても良くないか?」

「…聖書の原書。」

「あ、マジで興味ねぇや。」


淡々と答える私に、気を悪くするわけでもなく。
答えを返すだけで、明るく笑う。
出会った頃からそうだった。





無表情で、何を考えているか分からないとよく言われる私。

最初こそ興味本位で近づく人は多いけれど。

こんなに長いこと、私に構う人は珍しい。

言葉足らずの私を、きっちりと理解してくれる。





本を繰る速度が次第に遅くなる。
考え事をしているから仕方もないのかもしれない。
頭の中から本以外のことを押しやって、もう1度本に向かうと決めた。















その瞬間だった。















「てかサンジ。離れて、読みにくい。」


本を覗き込んでいたはずのサンジが、私に抱きついていた。
…圧し掛かる、と言った方が正しいのかもしれない。
ずっしりとサンジの体重が乗っかっているし。
今にも圧し掛かるから押し倒される体勢になりかねない。


「イヤ。」


私の肩に嬉しそうに擦り寄るサンジ。
その頬を私は思いっきり抓り上げた。





「離れてくれる?」

「いひゃいいひゃい…はにゃれまふー………。」





涙目になりながら離れたのを確認して、私も手を離す。
サンジと私の間に挟まれていた本は、少し暖かい。
もう1度本を開いて、続きを読み始める。





…心臓が痛いくらいに鳴り響いていた。

顔には出ていないであろう、それだけが救いだった。

…けれど。

いつもより頬が熱いのは、隠しようがない。










「…ちゃんは俺の事嫌い………?」


頬を摩りながら、涙目でサンジは問う。
少しやりすぎたかと、内心悔いた。
それでも、言葉になるのはそんな胸の内とは似つかない言葉。


「読書の邪魔する人は嫌い。」

「…つまり今さっきの俺…?」

「そうなるね。」

「…仕方ないじゃん!俺ちゃんの事好きだもん!」

「理由になってないよ。」

「…う………。」





言葉に詰まったサンジ。

追い込んだ私。

決まってる、悪いのは私だ。自分でも分かってる。



好きだと言われて、嬉しかったと。
告げることが出来たら、どれだけ良い事か。
それが出来ないから、私なのだろうけれど。



サンジを傷つけてばかりで。
想ってもらうばかりで。





自分に腹が立つ。





サンジに辛く当たってしまうのは、きっとそのせいだ。



急に立ち上がったサンジに、私も視線を合わせる。
立ち上がることはしない。
それでも真剣に対峙するために、本を脇に置いた。










「だって…こんなに!こんなに好きなんだよ!?」










両腕をギリギリいっぱいまで広げて、サンジは叫ぶ。
真剣な目で、訴えかけるように。









「そりゃァ抱きつきたくもなるさ!」










何も言わない私に、気を悪くすることなく。
もう1度。
馬鹿みたいに大きく手を広げて。
それでは足りないと言うようにもがきながら。















「あ、そ。」


苦笑した私に、サンジは気付いたらしい。
さっきまでのもがいていた様はどこへいったのか。
素早い動作で私の傍に座りなおす。


「えと、ちゃんは!?」

「こん位。」

「少なッ!」


親指と人差し指で、少しだけ間を取って掲げる。
その小ささを見て、サンジは目で見て分かるほど肩を落とした。



コーヒーを手に取る。
…少し冷たくなったコーヒーは、程よく私を冷やしていく。
熱っぽさを振り払って、サンジに向き直る。
…今だ落ち込んだままのサンジの頬に触れると、サンジの肩が跳ねた。





目に光る涙を掬い取ると、告げた。





「…どこでもかんでも抱きつくとこと。」

「………?」

ちゃんって呼ぶサンジは、もう少し好き。」

「〜〜〜………!」















その後暫く、サンジは離れてくれなかった。
サンジから見えない角度。


私は少しだけ、安心して笑う。


好きの大きさは人それぞれ。
私の中での最高値。
それは、サンジへの好き、だと思う。







***あとがきという名の1人反省会***
お待たせしました!今更ながらに1300Hitの
サンジ夢を書かせていただきましたァ!
本当に本当にお待たせしちゃっててごめんなさい!
って…毎回言ってますね(苦笑
リクエスト内容は
「主人公がクール、サンジベタ惚れ系」
だったので…どう書いて良いか分からず…(ぇ
こんなもので宜しければくれは様!どうぞお持ち帰りください!

今後とも僕色曜日。及び水上 空をよろしくお願いいたします。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

2006.01.15 水上 空