君が好き。

泣いてる君は、もっと好き。
透明の雫が光に反射して、君を彩るから。



どんな君も好き。

怒っていても、笑っていても。
…それでも、1番なのは君の泣き顔。





だから、俺のために。







〜泣いてよ。〜







「夜神君、大好き。」

「俺もだよ、。」

「…ほんとに?」

「スキだよ。。」

「……………えへへ。」


自分の部屋に彼女を入れたのは、初めてじゃない。
でも、ここまで本気になった子を入れたのは、きっと初めてだと思う。





はにかみながら大好きと告げる声も。

俺の言葉に、嬉しそうに染め上がる頬も。

照れ屋なくせに、淋しがりなところも。

全部、好きだよ。















「でもね。」

「何?」

「別れたいんだ。」


唐突に切り返した言葉に、は固まる。
眼が虚ろだね。
俺の言葉に動揺してくれて、嬉しいよ。
まぁ、動揺してくれないと困るんだけれど。





返事のないことを良いことに、畳み掛けるように。
笑顔で言葉を続ける。

は、普段は俺に逆らわない。嫌とは言わない。
でも、今回は言うよね?ちょっと位俺に逆らえばいいよ。





「いいでしょ?。」

「……………。」

「黙ってちゃ、分からないよ。」





良い顔してるよ、

早く、返事してくれないかな?

そうしたらきっと、俺が望んだ結果が見られるはず。















「………やだ。」


充分間をおいて、小さく、は言った。
それと同時に、堰を切ったようにポロポロとの瞳から涙が溢れ出した。





これを、待ってたんだよ、

…綺麗だから。





「どうして?」

「だって……何で、いきなりそんな事言うの?」

「変わらないからだよ。」


大粒の瞳から、涙が頬を伝う。
うん、いつだって変わらず綺麗だよ。





伝う雫に反射する光が、を淡く包むんだ。

落ちた雫が、洋服に染みを作って。

俺のための涙が、想いが、にまた浸み込んでいくんだ。





「…何が?」

が。俺を、名前で呼ばないから。」


適当に、話を正当化できそうな嘘を吐く。表情は変えない。
ただ、からは視線を逸らさないでいる。
大きな瞳が涙で濡れて、俺を見つめ返してくる。





………あぁ、好きだな。その顔。





「…だって、それは…。」

「俺を、嫌いだからだろう?」

「違…っ………!」

「違わないよ。」

「ただ、恥ずかしくて…。」





形の良い眉は歪んでいるけれど。

伝った雫が光って、光って。

大きな瞳も、頬も。ピンク色だね。

困った表情も可愛いよ。





には、ピンク色が良く似合うんだね。
今度、ピンクの小物でもプレゼントするよ。


「俺は、恥ずかしくないよ。って呼ぶの。」

「………………。」

「俺と、別れたいんだよね?だから、そうしてあげる。」


冷たく言い放つ。最後の笑顔とばかりの笑顔付きで。
そこまでしてから、やっと視線を逸らす。
椅子から立ち上がろうとすると、の手がそれを阻止した。










「………ゴメンナサイ、ら…月、君。」

「君、はいらないんだけど?」

「………月………。」





自ら俺の前に回りこんだは、寄り添ったまま離れようとしない。

………これ以上は、可哀想かな。

…これ以上やると、本当に別れないといけないかもしれないしね。

わざとの耳元で、甘めの声で聞いてみる。





「…は、俺がスキ?」

「…好き。月…が、好き。」

「そう、良かった。じゃぁ、別れなくて済むよね。」


その声を聞いたと同時に、は大きく首を縦に振る。
必死な様子がまた、可愛い。





…名前で呼んでもらえる様にもなったし。



今日の罠は大成功だ。





「好きだよ、。」



乱暴に引き寄せて、強引に口付ける。
顔を離すときはいつものように。
が好きだという笑顔を武器にして、を黙らせた。
涙を唇で拭って、赤く腫れた目元に今度は優しく唇を這わせる。


小さな手は、庇護の手を求めるかのように細かく震えて。
握った俺のシャツに新たな皺を作った。





…可愛いね、

今度は、どんな罠を張っておこうかな。

は俺に逆らわないよね?

自分から罠に嵌って。俺の傍に居て欲しい。










好きだよ。
その弱々しい、君の泣き顔が。


好きだよ。
俺に寄り添うしかない君の手が。





泣かせた分は、また可愛がってあげるよ。

君を泣かせた想いと同じくらいの愛で。

君が離れていかないように。何度でも。

甘すぎる飴と、痛すぎる鞭を交互にね。















好きだよ。

本当は、壊してしまいたいくらいに。

好きだからこそ、君を壊したい。





俺の傍で、俺のために泣いてよ。







***あとがきという名の1人反省会***
500Hitフリー夢です。月君が、怖いです。
怪しさ満天です。こんなのフリーにしていいのかなぁ…orz

最近、本誌の方で月君が黒さ満天だったので、それをモチーフに書きました。
純粋な主人公を罠に陥れて楽しむ月君。
月ファンの方、ゴメンナサイ。いっぱいいっぱいゴメンナサイ。

そういえば、月君、スキと好きを使い分けてます。
好き、は本心。スキは策略です。多分。

遅くなりましたが、500Hitありがとうございます。(といってる今は1700更新中…
今後とも僕色曜日。をよろしくお願いいたします。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

2005.10.7 水上 空