上司に先輩、それに新入社員の私とくれば。
溜まってくるのは胃に痛い、ストレスという訳でして。
それも過度になってくると、自分ではもうどうしようもなくて。



体調管理?何それ。

御飯なんて食べる気もしない。



あー、早く寝たい。
今日はもう人と関わる前に、ベッドにダイブしたい。







〜ストレス解消あいてむ〜







家の鍵を開けると、…何故だか鍵が閉まった。
という事は。
合鍵を渡している人物か、泥棒さんのお出まし。
泥棒に入られて困るものなんて早々無いけど。
厄介なのは、どっちかっていうと前者。


「お帰りちゃん!」

「…来てたんだ?サンジ。」





悪気がない、五月蝿い、すぐ抱きつくから身体が重い。





今の私にはこっちの方が絶対面倒な人物。
そりゃ、嫌いな訳ないんだけれど、ね。



合鍵を渡したのが間違いだった。
付き合っていれば、それが当然なんだというナミの言葉を信じたのが運のツキ。
久々に定時に帰ってきて、ゆっくり休めるような日でも。
寧ろ、そんな日を狙ってサンジはちゃっかり私の家に来ている。





グッバイ私の睡眠時間………。

ベッドにダイブするという目標は粉々に打ち崩された。





「そりゃぁもう!だって今日ちゃん定時の日でしょ?」

「まーね。」 

「だから、一緒に御飯食べようと思って。」


ニコニコ笑いながら、私の隣を歩くサンジによって。
リビングに近づくにつれて、サンジの作ったご飯の良い香り。
でもそれが食欲を沸かせるかと言われれば、…必ずしもイコールじゃなくて。

肩に回されたサンジの手を払って、寝室に直行する。









「御飯いらなーい。お腹空いてなーい。」

「え、ちょ、ちゃん!」

「疲れた、眠たい。御飯持って帰って。」


ちょっと、可哀想な気もするけど。
これでサンジが懲りないのも知ってるから。
精一杯、疲れてますアピールをして、サンジに背を向ける。
歩調を速めたけれど、それは途中で遮られた。







背中に、肩に、足元に。

柔らかくて、暖かくて、本当は大好きなサンジの身体が寄せられる。










「………俺が邪魔なのは良いけど…御飯は食べないと駄目だって。」





甘い香りは、サンジのコロンの香り。

優しい香りは、きっと、御飯の。





「お腹に優しいもの作ったから。ちゃんと食べてよ、ちゃん。」







私の心を、サンジの香りが満たして。

トゲトゲにささくれた心に、薄く膜が張られる感じがした。

トゲトゲの心なんて包んだら、サンジの方が傷つきかねないのに。

ほんともう。何でよ。



なんで、そんなに優しくできるの。

なんで、そんなに私を見ていてくれるの。

私の体調なんて、自分自身がどうでも良いって思ってたのに。

見てくれてる、なんて思ったら、何も言えなくなっちゃうのに。

安心しちゃうのに、頼っちゃうのに。















「…美味しい。」

「それは良かった。」


結局、私は料理を全て食べきった。
御飯は食べたくなかったはずなのに、デザートまで全部。
ストレスで、胃が痛かった。
そんな事は全部忘れられる味だったから。


「サンジ。」

「ん?」

「有難う。」

「どういたしまして、プリンセス。」


ようやく笑ってくれたねと、サンジは言う。
隣に座ったサンジが距離を埋めるより早く、私から擦り寄る。
躊躇いもなく抱き返すサンジの腕は優しい。

私を少しだけ放すと、開いた距離から私の手を取り。



指先に触れるだけ。

優しい口付けを落とした。










私のストレス、消してくれたのはきっと料理。
すんなり食べれた料理の隠し味は、きっと優しさ。


「また明日も、御飯、作りに来てくれる?」


私を癒してくれる人は、いつだって貴方。










私の問いに、すぐ頷いてくれる貴方なんだから。







***あとがきという名の1人反省会***
え、何だこれ。私ホント癒されたいのかな。
リクエスト賜りました、ワンピサンジ夢!です。
つーかサンジが報われない気もするけど
それはスルーでお願いしたいところ。
こんなでよければお持ち帰り下さい、まゆさんv

今後とも僕色曜日。及び水上 空をよろしくお願いいたします。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。

2006.06.10 水上 空