とある月夜の物語



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こうもり傘を握り締め

僕から悪が抜けていく

夢見る暇も与えずに

ひらりと闇に消えていく





どこへも帰る当てはなく

ただただ闇を飛んでいく

消えない悪を握り締め

闇から闇へ飛んでいく





抜け出た悪は僕に言う

確かに君と共に居た

知らぬと僕は返したが

向き合う顔は瓜二つ







確かに僕と認めたら

静かに彼は飛んでった







それ見て僕はつと思う

どうして君は空へ発つ

止められないと知っていて

一筋涙が頬伝う





こうもり傘を握り締め

抜け出た悪は闇に溶け

此処には二度と帰らない

二筋涙が頬伝う





ほんとにそれでいいのかと

言葉がひとつ零れ出た

月夜に黒い陰ひとつ

こうもり傘で宙を舞う










片手がひらり、揺れてった。



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私の中に悪があるのなら、どうせなら
善のために消えることを願いたかった。