とある月夜の物語 *************** こうもり傘を握り締め 僕から悪が抜けていく 夢見る暇も与えずに ひらりと闇に消えていく どこへも帰る当てはなく ただただ闇を飛んでいく 消えない悪を握り締め 闇から闇へ飛んでいく 抜け出た悪は僕に言う 確かに君と共に居た 知らぬと僕は返したが 向き合う顔は瓜二つ 確かに僕と認めたら 静かに彼は飛んでった それ見て僕はつと思う どうして君は空へ発つ 止められないと知っていて 一筋涙が頬伝う こうもり傘を握り締め 抜け出た悪は闇に溶け 此処には二度と帰らない 二筋涙が頬伝う ほんとにそれでいいのかと 言葉がひとつ零れ出た 月夜に黒い陰ひとつ こうもり傘で宙を舞う 片手がひらり、揺れてった。 *************** 私の中に悪があるのなら、どうせなら 善のために消えることを願いたかった。 |